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【ホライズンのオススメ! №084】~自転車保険のススメ~ 高額賠償請求に備え加入を

こんにちは弁護士の田島です。
いつもはラーメンなどのグルメ紹介ばかりですので、たまには弁護士らしく、まじめなテーマでいきたいと思います。

そのテーマは「自転車保険」です。

もしかすると、この記事をお読みの方の中にも、すでに自転車保険に加入されている方がいるかもしれません。

最近では、大阪、名古屋、鹿児島などが条例で自転車に乗る人に対して自転車損害賠償保険になどに加入が義務化されています。今後、全国的にこういった条例が制定されていくと思われます。
自転車の事故といえば、相手が歩行者、自転車同士、自動車など様々な類型がありますが、いずれにしても自らの運転ミスで相手が損害を被った場合、運転者は損害賠償責任を負います。特に相手が怪我をした場合、治療費、慰謝料、休業損害、後遺障害による逸失利益などをあわせると数百万円、数千万円といった高額の損害賠償責任を負うこともあります。

2015年の自転車事故は、約10万件(警察庁調べ)。年々減少しているとはいえ、自転車事故では約97%が何らかのケガを負い、約0.6%の人が亡くなっています。

ニュースでも大きく報道されましたが、平成25年には、神戸地裁において小学生の自転車にはねられた高齢女性が寝たきりになった事故を巡り、当該小学生の母親に9521万円の賠償を命じる判決も出ています。
私も、これまでに、自転者事故による損害賠償案件を数件取り扱ったことがありますが、いずれも300万円~2000万円ほどの賠償額に上る事案でした。
上記のように地方自治体が自転車保険の加入を義務付けたのは、このような自転車事故による高額賠償請求の増加が考えられます。

では、自転車保険はどうやって加入するのでしょうか。

以下、加入経路についてご説明します。

1 個人賠償責任保険

まずは、ご自身が加入されている火災保険や地震保険の保険会社や共済、またはクレジットカード会社の付帯保険の保険会社などに電話して、自転車事故に関する保険に加入していないかどうか確認してみてください。
なぜかと言いますと、火災保険や地震保険、付帯保険のオプションで、個人賠償責任特約を付けておられることがあるからです。費用としては月100円程度で附帯できることが多いです。賃貸マンションでも、入居時に火災保険の加入を義務付けられていることが多いのではないかと思います。

そして、通常、個人賠償責任特約は自転車事故をカバーしています。
ただし、個人賠償責任保険に関しては、限度額の設定があったり(1億円であることが多い)、示談代行が付いてないことがあるとか、なお問題があるにはあります。

自転車による事故が起きたときには、「自転車事故の保険なんて入っていない!」と思った場合でも、慌てずに、まずは確認してみてください。

2 TSマーク保険

自転車安全整備士のいる自転車店で整備点検を受ける方法があります。
点検を受けると、賠償責任保険と傷害保険が自動付帯されているTSマークが貼付されます。

マークには2種類があり、それぞれ賠償責任補償額が異なります。

・青色のTSマークの賠償責任保険額は最高1000万円、

・赤色のTSマークの賠償責任保険額は最高1億円。

保険料は、整備点検費用(青色TSマークは1,500円前後、赤色TSマークは2,000円前後)の中に含まれています。

ただし、保険期間は1年間ですので、TSマークによる補償を受けたいなら、毎年整備を受ける必要がある点や、青色TSマークの場合には保険金額がさほど大きくなく、被害が大きい場合には対応しきれないことに注意が必要です。

3 自転車保険

各都道府県が交通安全協会などと連携して提供している自転車保険に加入する方法があります。
東京の場合、一般財団法人・東京都交通安全協会が扱う自転車保険は、三井住友火災海上保険になっています。

年間7,200円の保険料で家族全員が最高3億円の賠償責任補償を受けられます。
自転車を運転していた人が死亡、後遺障害を負った場合には最高290万円の保険金が支払われ、事故で入院したら1日4,000円が支払われます。
示談代行サービス(自動車事故のように、保険会社の担当者が被害者との示談を代行してくれます)が付いている保険も多く、これから加入者も増えていくことが予想されます。

また、最近では、携帯電話会社やクレジットカード会社を通じて自転車保険に入る方法があります。ドコモ、au、ソフトバンクでは自転車ユーザー向けの保険を扱っており、いずれも携帯電話料金と併せて支払うことができます。
各社ともさまざまなコースを用意しており、毎月の保証金額に応じて、賠償責任補償額、サービス面(示談交渉の有無、家族カバーか否か等)等が異なります。

4 おわりに

以上、自転車保険についてご紹介しました。
一見すると、自転車は自動車より事故の衝撃が弱そうだから、賠償額も少なくなるのではないかと思われがちです。
しかし、損害賠償の金額は、衝撃の大きさだけでなく被害者の方の年齢や収入といった事故前に予測できない事情によって左右されることもあります。
例えば、事故による衝突が軽微でも、被害者が医師で事故によって手がしびれて手術ができなくなってしまったような場合には、損害賠償額は莫大なものになる可能性があります。
私が実際に取り扱った事案でも、被害者の方がピアニストの方で取り返しのつかない損害(損失)を与えてしまったというものがありました。

車を運転される方のほとんどは「任意保険」に加入されていると思いますが、自転車の場合はどうでしょうか。
自転車は、車と違い免許制度や明確な年齢制限がないため、気軽に利用できる乗り物というイメージがありますが、実際の交通事故事例を見てみると、自転車に乗る際でも自動車と同じく絶対に気を緩めてはいけないことがわかります。

万が一の備えとして、十分な保険金額の個人賠償責任保険に加入することが重要なことと考えます。
ぜひ、この機会に自転車保険についてご興味をもっていただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。


次回のホライズンのオススメ!は11月1日(水)更新予定です。

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